西本願寺本万葉集 

西本願寺本万葉集 

新点本

新点本ではほとんどの場合、傍訓形式で訓を本文の右側にカタカナで記している。うち文永本は古点、次点、新点のうち正しいと考えられた訓を多くの場合、色分けして右側に記している。それに対し寛元本では古点、次点を右側に、新点を左側に書いている。

西本願寺本鎌倉時代後期の13世紀末から14世紀初頭の書写と推定されている、20冊の冊子本である。

縦、約32.1センチ、横、約24.8センチの大きさで、「大和綴」という装丁がなされている。

この写本は、1266年(文永3年)に仙覚が完成させた『仙覚文永三年本萬葉集』(原本は失われている)の系統に属している。

仙覚と親交があった北条実時が完成後間もなく書写したものを、さらに書写したものと考えられている。さらに鎌倉幕府滅亡後に足利義満北条実時の創建になる称名寺に使者を遣わして貴重な書籍を収集した折に、『尾州家河内本源氏物語』(大きさ、装丁が酷似している)などとともに入手し、後年皇室に献上したものである。その名称は、後奈良天皇本願寺第10世の証如に下賜して、西本願寺の蔵書となったことから、佐佐木信綱命名した。

1917年(大正6年)に佐佐木の手に渡ったあと、現在は佐佐木が寄贈した「竹柏園本」内の一点として石川武美記念図書館が所蔵している。