ウォー・シミュレーションゲーム

現代的なウォー・シミュレーションゲームの先祖にあたるものはボードゲーム等の伝統的な「戦場を模したゲーム」である。歴史上、ボードゲームの亜種となるルールは多数が作られてきたが、その流れの果てに、19世紀のプロイセンにおいて、戦場で兵を指揮する訓練として研究・教育手段となるクリークシュピールというものが生まれた。戦場を精巧に再現した箱庭の中で部隊の動きをシミュレートするそれは兵棋演習として後の世に根付くこととなる。  また、欧米では19世紀以前から模型は一部の層の趣味として存在していた。やがて陳列するだけでは飽き足らなくなった模型ファンたちは、動力を付けて動かすようになり、鉄道模型を始めとする可動式模型を生んだが、軍隊模型ファンの中にはただ動かすのではなく、兵棋演習のようなことを「遊び」として行ってみようという流れが生まれ、ミニチュア・ウォーゲームと呼ばれる娯楽が誕生する。ただし、この当時のミニチュア・ウォーゲームは鉛製のおもちゃの兵隊を使った戦争ごっこにルールを定めたような素朴なものにすぎなかった。  

第二次世界大戦後の1954年、アメリカのチャールズ・S・ロバーツが、ミニチュア・ウォーゲームや兵棋演習の戦略的な部分のみに着目して、マス目が印刷された紙製の地図と、厚紙で作られた駒を使う自作のボードゲームタクテクス』を自費出版で販売。このゲームは彼我の戦力比によって戦闘結果が多様に変化するという概念を初めてホビー用のゲームに持ち込んだんものでもあり、ウォー・シミュレーションゲームと呼ばれるジャンルの元祖ともされている。ロバーツは1958年にアバロンヒル社を設立し、紙製の地図と駒を使ったボードゲームとしてのウォー・シミュレーションゲームを多数開発していく。その後もSPI社、GDW社などが中心となって開発が進んだ結果、徐々にアメリカ人の間に普及してゆき、1970年代には数多くのファンを獲得するに至った。