翻訳に於いて翻訳の出来が問われる事は当たり前であるが、それ以前に重要な事は原本として何を使用するかに専心する事で有ると思われる。ホメロスの『Iλιάς』を翻訳する時に先ず何を原典とするかを思慮しなければならないと思われる。ギリシア語の場合、基本的にOCT、ビュデ版、トイプナー版のどれかを選択するかになると思われるが、三者を先ず全て揃え其れから三者のうちどれかを選択する事になると思われるが、選択にも選択の判断の理由を持ち、また、三者の異同も正確に把握して三者についてよく知っておかなければならなくなる。また、更に専門的になると活字では無く『Iλιάς』の写本から考察しなければならなくなり、底本を何にするかに於いても翻訳は苦心する事になる。